イーサリアムクラシック(ETC)

信頼の理由

イーサリアムクラシック(ETC)とは?

イーサリアムクラシック(EthereumClassic/ETC)は、分散型ブロックチェーンのプラットフォームです。レイヤー1ブロックチェーンであるイーサリアムから分岐して生まれた、別系統のプロジェクトです。

イーサリアムクラシックはスマートコントラクトを利用できるネットワークで、開発者はオープンソース上で分散型アプリケーション(dApps)を作成・展開できます。金融サービス、ゲーム、NFT、メタバースなど、さまざまな分野でのアプリケーション開発を可能にしています。

イーサリアムクラシック(ETC)の特徴

イーサリアムクラシック(ETC)は、2016年に起きたThe DAO事件がきっかけで誕生しました。分散型自律組織(DAO)がハッキング被害に遭い、イーサリアムチェーンから1600万ドル相当の資金が盗まれたのです。仮想通貨の歴史において、マウントゴックス事件と比類する重要な事件と言えます。

事件が起きた際、一部の開発者は、被害を受けた投資家を救済する目的で取引履歴を巻き戻し資金を取り戻す提案をします。結果として資金の70%は回収されましたが、残りの30%は行方不明のままでした。

しかし、資金回収の対応策に対して、コミュニティ全体の賛同は得られませんでした。最終的にイーサリアムはハードフォーク(分岐)し、新たなブロックチェーンプラットフォームとしてイーサリアムクラシックが誕生したのです。

イーサリアムクラシックの熱心な支持者たちは、「コードは法である」という原則を重視しています。いかなる状況下でもブロックチェーンの不変性を守るべきだという信念に基づいて運営されるべき、との主張です。

「コードは法である」という格言は、スマートコントラクトが絶対的で変更不可能であるべきだという考えを表しています。真に分散化されたエコシステムを構築するためには、コードの整合性を守ることが不可欠だと訴えているのです。

ETCトークンとは?

ETCは、イーサリアムクラシックのネイティブトークンです。トークンは、パーミッションレスブロックチェーンであるイーサリアムから分岐した直後に導入されました。

ETCの代表的な用途は、以下のとおりです。

  • イーサリアムクラシック上における取引手数料の支払い
  • スマートコントラクト上のブロックスペースを確保するためのコスト支払い

ETCはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)方式で運用されているため、ステーキング(投資家がネットワークの安全性に貢献して報酬を得る仕組み)機能はありません。

しかしステーキングの代わりに、投資家は大手仮想通貨取引所が提供するサービスを利用して、保有するETCから利益を得ることができます。一定期間ETCを預けることで変動金利の利息を得られるのです。

イーサリアムクラシック(ETC)の仕組み

イーサリアムクラシックは、ビットコインの分散性とセキュリティの概念を受け継ぎながら、創造的な柔軟性も備えています。高度なセキュリティを提供し、開発者はスマートコントラクトを使って分散型アプリケーションを構築できます。

イーサリアムクラシックのシステムは、主にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)アルゴリズムを使用して取引を処理します。具体的な仕組みは、以下の通りです。

  1. 送信された取引は、最初にメモリプール(mempool)と呼ばれる一時保管場所に集められます。
  2. マイナー(採掘者)は、検証したい取引を選び、複雑な暗号パズルを解くための競争を始めます。
  3. パズルを最初に解いたマイナーが、解答をネットワーク全体に発信し、他のマイナーに知らせます。
  4. 他のマイナーたちは解答を再検証し、取引がブロックチェーンのルールに従っているかを確認します。
  5. 問題がないと確認されると、最初にパズルを解いたマイナーは約3.2ETCのブロック報酬を得ます。他のマイナーは取引手数料の一部を受け取ります。
  6. 検証された取引は、他の取引と共にブロックに追加され、最新のブロックに繋がれてチェーンを形成します。

上記のプロセスにより、イーサリアムクラシックは安全で効率的な取引処理を実現しています。

イーサリアムクラシックvs.イーサリアム

仮想通貨のイーサリアムクラシックとイーサリアムは、基本的な構造が似ているものの、運用方法に大きな違いがあります。

イーサリアムクラシックは、従来型または第一世代と呼ばれるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)という合意形成アルゴリズムを使用しています。マイナーが取引を検証することでネットワーク手数料とブロック報酬を得られる、数少ないスマートコントラクトプラットフォームの1つです。

一方、イーサリアムは2022年にプルーフ・オブ・ステーク(PoS)という新しい方式に移行しました。PoSでは、バリデーター(検証者)が取引を検証する権利を得るために、多額のイーサ(イーサリアムの仮想通貨)を預け入れる必要があります。PoSへ移行することで、リキッドステーキングなど新しい仕組みも登場しました。

上記の違いは、両プラットフォームのセキュリティ方式や参加者へのインセンティブ構造に大きな影響を与えています。

イーサリアムクラシック イーサリアム
コンセンサスアルゴリズム プルーフ・オブ・ワーク(PoW) プルーフ・オブ・ステーク(PoS)
マイニング報酬 マイナーはネットワーク手数料とブロック報酬を獲得する バリデーターは検証のためにイーサ(ETH)をロックする
エネルギー効率 エネルギー効率が低く、電力を大量に消費する エネルギー効率が高い
スピード 新しいネットワークに比べて遅い 比較的高速なトランザクション処理
不変性 不変性を重視 ブロックチェーン取引の変更を可能にする
トークン供給 2億1000万トークンの固定供給量 供給量の制限なし

イーサリアムクラシックの歴史

イーサリアムクラシックは、イーサリアムプロジェクトの初期開発者による対立の後、2016年7月に正式にローンチされました。具体的な歴史は、以下のとおりです。

イベント
2015年7月30日 イーサリアムは、ヴィタリック・ブテリンとイーサリアム財団によって開発されたブロックチェーンプラットフォームです。フロンティアと呼ばれるバージョンで、チューリング完全(非常に複雑なプログラムでも理論的には実行できる能力)なスマートコントラクトを、ブロックチェーン上で実行可能にしました。
2015年9月8日 フロンティア・ソーイングアップグレードが行われ、イーサリアムの将来的なロードマップを踏まえた「IceAge」機能が導入されました。「DifficultyBomb」と呼ばれるメカニズムを使って、マイニングを徐々に難しくし、最終的にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行を促す仕組みです。
2016年3月16日 イーサリアムチェーンのバージョン2である、ホームステッド・アップグレードがリリースされました。
2016年4月5日 ブロックチェーン技術を使ったサービスやインフラを提供する会社Slock.itが、DAO(分散型自律組織)のためのスマートコントラクトを初めて本格的に監査しました。
2016年4月30日 DAOクラウドセールが行われ、一般の人々がDAOプロジェクトに参加するための資金集めが行われました。ガバナンストークンが発行され、トークン保有者は、DAOの意思決定に参加する権利を持っていました。
2016年5月27日 DAOクラウドセールが終了しました。
2016年6月17日 DAOがハッキングされました。(The DAO事件)
2016年7月20日 多くの議論が交わされた後、イーサリアムクラシックがリリースされました。プロジェクトトークンは、The DAO事件を忘れないようETCに改名されました。「Classic(古典的な)」という名にすることで、元のイーサリアムのビジョンや原則を維持していることを示しています。

イーサリアムクラシックは、誕生直後から様々なハッキング攻撃の標的となりました。最も深刻だったのが、いわゆる51%攻撃です。

51%攻撃とは、1つの組織(または個人)がネットワークの半分以上を支配してしまう事態を指します。ネットワークの中央集権化が進み、取引の修正が可能になるなど、ブロックチェーンの信頼性が大きく損なわれる危険性があります。当初、ETCの開発チームはネットワークの異常をセルフィッシュマイニング攻撃だと考えていました。しかし、その後の調査で、実際には51%攻撃であったことが判明しました。

多くの脅威にさらされたにもかかわらず、イーサリアムクラシックは興味深い選択をしました。以前はより拡張性が高く、エネルギー効率の良いアルゴリズムへの移行を検討していましたが、最終的にはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を維持する決定を下したのです。様々な問題を抱えながらも、イーサリアムクラシックは開発中止にはなりませんでした。

セキュリティと分散性のバランスを取ろうとする、イーサリアムクラシック独自の方針を反映していると言えるでしょう。

イーサリアムクラシックの創設者は誰ですか?

イーサリアムクラシックは、元々のイーサリアムプロトコルから派生したブロックチェーンです。そのため、創設者は本来のイーサリアムと同じで、ヴィタリク・ブテリン、ガビン・ウッド、チャールズ・ホスキンソンなどの名が挙げられます。しかし、イーサリアムコミュニティが2つに分かれて以降、イーサリアムクラシックの開発チームは匿名性を保っています。

現在、イーサリアムクラシックには公式の開発チームは存在しません。代わりに、プロジェクトはオープンな開発モデルを採用しています。つまり、世界中の誰もがプロトコル開発に参加できる仕組みになっているのです。

イーサリアムクラシックの開発モデルは、分散化とコミュニティ・ドリヴン(コミュニティ主導)の理念を反映しており、多様な支援者によってプロジェクトが進められています。

イーサリアムクラシックの使用例

イーサリアムクラシックの具体的な使用例をご紹介します。

イーサリアムクラシックの使用例。

スマートコントラクトとdAppsの開発

イーサリアムクラシックは、開発者がスマートコントラクトを作成し、分散型アプリケーション(dApps)をスムーズに運用できる環境を提供します。スマートコントラクトは、設定された条件に基づいて自動実行されるプログラムです。中央機関や特定の個人・組織の介入を受けずに、プログラムされた通りに実行されます。

分散型金融(DeFi)

イーサリアムクラシックは、分散型金融(DeFi)エコシステムのアプリケーション開発基盤としても機能します。開発者は、貸借、分散型取引所、イールドファーミングなど、幅広いDeFiアプリケーションを構築できます。誰もが仮想通貨取引に参加できるオープンな場を提供しているのです。

資産のトークン化

イーサリアムクラシックは、物や権利をデジタルで表現する手段も提供します。例えば、不動産や土地の権利書のような資産を、デジタルトークン(NFT)に変換することが可能です。NFTは、イーサリアムクラシック対応の仮想通貨ウォレットで保管し、管理することができます。

サプライチェーンの透明性

イーサリアムクラシックの透明性により、製品の生産者からエンドユーザーまでの追跡が可能になります。ユーザーが受け取る製品の真正性が保証され、サプライチェーンの過程を確認できます。

ブロックチェーンゲームとデジタル資産

イーサリアムクラシックは、ゲームやNFTなどのデジタル資産の開発を可能にします。多様なゲーマーが、制限なくブロックチェーンゲームを楽しむことができます。ゲーム内の資産をNFTとして所有し、自由に取引や獲得することも可能です。

イーサリアムクラシックの今後と将来性

近年、ビットコインやイーサリアムクラシックなどプルーフ・オブ・ワーク(PoW)方式の仮想通貨(暗号資産)における二酸化炭素排出量が注目を集めています。PoW方式のプラットフォームは、取引の検証に多大な電力を必要とするためです。

しかし、再生可能エネルギーの急速な普及が、問題の解決策となる可能性があります。PoWネットワークが再生可能エネルギーを利用することで、化石燃料に依存せず、温室効果ガスを排出することなく取引を検証できるようになるからです。

今後数年間で、再生可能エネルギーが仮想通貨業界全体に広く採用されれば、イーサリアムクラシックの価値が大幅に上昇する可能性があると言えるでしょう。執筆時点でのイーサリアムクラシックの仮想通貨ランキングは、29位となっています。

さらにETCは供給量を制限したトークノミクスを採用しているため、デフレ傾向にあります。ETCの価値は今後数年間で100倍以上に上昇する可能性があるとの予想もあります。ただし予測は、市場の変動や技術の発展など、様々な要因に左右される可能性があるため注意が必要です。

インフレ仮想通貨とデフレ仮想通貨の比較表

結論

イーサリアムクラシックは、イーサリアムプロトコルの原型とも言える存在です。初期のスマートコントラクトネットワークに使用された元のコードを保持しています。しかし、セキュリティ問題が発生した後、コミュニティ内で意見が分かれ、独立したプロトコルとなりました。

イーサリアムクラシックは、現在もプルーフ・オブ・ワーク(PoW)システムを採用し続けています。一方、元のイーサリアムはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)アルゴリズムへと移行しました。

両者の違いにより、イーサリアムクラシックは現在、マイニング可能な唯一のスマートコントラクトネットワークとなっています。同時にイーサリアムクラシックは、イーサリアムチェーンの歴史を示す証拠としての役割も果たしています。

まだ認知度は低いながらも、イーサリアムクラシックは分散型金融(DeFi)エコシステムにおいて重要な役割を果たし続けています。今後も長期にわたって、地位を維持し続けるでしょう。

イーサリアムクラシックは、伝統的なブロックチェーン技術のメリットを守りつつ、スマートコントラクトの革新的な応用を可能にする独自のスタンスを保っているのです。

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Jimmy Aki
Crypto and Blockchain Writer
Jimmy Aki
仮想通貨&ブロックチェーンライター

米バージニア大学を卒業後、 BeInCrypto、Bitcoin Magazine、Decrypt、Cryptonewsなどの大手暗号資産メディアで勤務。Techopediaのライターであると同時に、…...